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朽ちた廃路線

 ――ガタンゴトン、ガタンゴトン。

 今日で役目を終えるこの電車には、少し前からは考えられないくらいの乗客がいた。首から提げたカメラ、重そうなリュックサック。たぶん鉄道マニアという部類の人たちだろう。窓の外に目をやる。

 長閑な田園風景だった。青々とした稲穂は秋になれば黄金の輝きで乗客を楽しませた。反対の窓に目をやると、近すぎるというくらい近い山。春には緑の中に点々と薄紅色が色づき、乗客の目を楽しませた。ガタンゴトン、ガタンゴトン。そんな景色も過ぎていき、これより先には見られない。

この鉄道が行き着く山間の村は、近年過疎化の影響を強く受けている。その影響もあり、この鉄道の乗客数は減少。どうしようもなくなった鉄道会社は、この路線を廃止することに決めた。鉄道は必要とされているところに敷かれるものだ。それが廃止されることになったということは、当然、必要とされなくなったということだろう。

 長らく通学のためにこの路線を利用していた僕は、この路線にそれなりの愛着があった。だから今、大学に進学してこの地を離れたのに、廃線すると聞いて戻ってきているのだろう。ガタンゴトン、ガタンゴトン。聞き慣れた音にも寂しさがある。


 ――焦げ茶色の電車は、拍手でもって見送られた。列車の墓場に入っていくその後ろ姿は、仕事をやり遂げた誇らしさと、それより大きな寂しさに満ちていた。ガタンゴトン、ガタンゴトン。耳に残る音は、もう聞こえない。


 ――それから、何年か経っただろうか。電車が通らなくなった線路の上を、僕は歩いている。鉄道マニアも、電車本体には興味あれど、あまり線路には関心がないらしい。あたりには、自分の田んぼを世話するおばあさんくらいしかいない。黄金の季節はまだ訪れない。反対を見ても、薄紅の季節はもう過ぎた。

 プアン、と音がした。焦げ茶色の電車、薄汚れた車体。運転手もなく、乗客もなく、ガタンゴトンと音を立てながら、こちらに向かって走ってきた。

 ――プアン、ガタンゴトン、ガタンゴトン。

 ……物にも、魂のようなものがあるのだろうか。

 僕をすり抜け走っていった焦げ茶色の電車からは、まだ走りたいと、そんな願いが感じられた。

 遠ざかる背中を見送って、僕はまた歩き出した。

 違う視点から見た風景は、まったく違うもののようで。まるでみちを歩いているみたいだった。


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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

金之助

Author:金之助
視界の彼方に山がないと落ち着かない大学生。
『濁江の蛙』名義で同人活動してます。東方SSを書き、主な住処は創想話。

「みさびゐて月も宿らぬ濁江にわれ住まんとてかはず鳴くなり」西行法師

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