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ゴミ

 
 
 
 
 
 ――息の白む冬の夜。凍ったようにピンと張り詰めた空気が、小さく浮かぶ月を鋭く通している。死んだように静寂するモノクロの世界に、ガサリという音が生まれた。
 寒そうに肩を竦めた少年。赤と緑の毛糸で編まれた耳あて付きのニット帽を被り、深い赤色のマフラーを巻いて、少し袖の余った厚い茶色のコートに明るい赤のミトンという完全防備をしている少年は、それでもまだ寒そうに身を震わせる。鼻の頭が赤らんでいるのが、少年をどこか幼げに見せていた。
 少年は大きく息を吐くと、両手に持った大きなゴミ袋を持ち直す。そうして歩みを再開した少年の道の先にはゴミステーションがあった。回収日は明日だが、現時点でも多くのゴミが出されている。ステーションは半分ほどのスペースが空いていた。
 そのスペースにゴミ袋を置き、小さく手を揺すりながら来た道を戻っていく。途中で欠伸が漏れ、それを赤いミトンで隠した。眠そうに目を擦り、少し足早になりながら帰路を進む。
 あのステーションに集められたゴミは、朝の八時に来る回収車に運ばれ、燃やされる。流れ作業的に燃やされ、それがあったという名残は燃えカスしか残らない。そんなことに感傷することもなく、少年はやがて見えてきた住宅街の端の家の玄関を開けた。
「ただいまー。うひゃ、寒かったあ」
 身を切るような寒さから一転、空調で暖められた屋内で体の強張りを緩めると、玄関を閉めて靴を脱いだ。
 リビングから声が聞こえる。
「おかえり、お疲れさま。ココア作ってあるから」
「え、ほんと? ありがとー」
 リビングにいたのは、少年よりも少し年上に見える少女だった。ブラウンとホワイトの柄のセーターに茶色のズボンという楽な格好で、ココアのカップを片手に持って本を読んでいる。年上に見えるとは言っても外見的にはせいぜい一つか二つ程度上にしか見えないが、落ち着いた雰囲気と眼差しは相応に人生を重ねた大人のようでもある。
 その少女はココアのカップを置くと、テーブルを挟んだ向かいにある椅子の前に置かれたカップを指し示した。ニット帽とミトンを外してテーブルに置き、脱いだコートを背凭れにかけてからカップを手に取る。
「ああ、あったかーい。ありがとねえ」
「どうも。甘くはしてあるから、あとは適当に調整して」
 自分のココアを啜りながら少女が無愛想に言う。少年は特に気にした様子もなく笑い、ココアを飲んで頷いた。
「いやあ、こっちはほんとに寒いねえ。僕のとこはこの時期でももう少し温かかったのに」
「慣れれば平気。きっと、来年には慣れてるわよ」
 少女は本から目を離さない。自分を見られてないというのに、少年は楽しげに笑っていた。
 秒針の音だけが静けさに響く。カップの中身が空になると、少女は溜め息をついて本を閉じた。カップを持って立ち上がると、タイミングを合わせて少年がカップを差し出す。面倒くさそうな少女の視線を受けて、少年がにっこりと笑った。
 やがて少女はもう一度溜め息をつくと、少年のカップを受け取った。そして、他愛のない世間話でもするかのように、
「さっきもニュースで騒がれてたわよ。殺人鬼のこと」
 と、無感情な瞳で言った。
 そして少年も、他愛のない世間話でもするかのように、
「へえ、そうなんだ。物騒だね、世の中」
 と、明るい瞳で笑った。






 

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

金之助

Author:金之助
視界の彼方に山がないと落ち着かない大学生。
『濁江の蛙』名義で同人活動してます。東方SSを書き、主な住処は創想話。

「みさびゐて月も宿らぬ濁江にわれ住まんとてかはず鳴くなり」西行法師

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